Project of
MASUNAGA 光輝

名作が、真に時を超えるための物語。

1970年、大阪万博のタイムカプセルに収納され、歴史に名を刻んだCUSTOM72。
その後継モデルとして誕生した「MASUNAGA光輝」の背景には、特別な思いと妥協なき工程が存在します。

貫かれた精神と技を、
いかに、身近な存在へと生まれ変わらせるか。

時は2009年、春。新たな転化に向けて歩み出したモデルがありました。増永眼鏡が誇る品質第一の姿勢・精神を宿し、約40年間、人気を誇った名作・CUSTOM72です。大きなきっかけとなったのは、ヴィンテージフォルムに対する人気の高さ。時流に乗り、ファッションアイテムとして羨望の眼差しを受けていたCUSTOM72に、新たなる可能性が求められたのです。
テーマとなったのは「リバイバル・プラス」。目指したのは、単なる過去の眼鏡のリバイバルでは終わらない、現代に受け入れられる洗練性を備えた存在感です。ただ、この命題は、指標でありながら壁となって行く手を阻むキーワードでもありました。現代が真に求める姿へ生まれ変わるためには、デザインの大きな刷新を行いながらも、持ち得る魅力の根幹には、約40年前CUSTOM72に込められた作り手の思が吹き込まれていなければいけません。

そうして、まず以下の3つのコンセプトが掲げられました。

【伝】伝わる精神・姿勢・技

【洗】現代が求める洗練性

【喜】創る喜び・持つ喜び

「精神・姿勢・技」という増永眼鏡の全てのブランドに共通する品質第一の考え方をベースに、蓄積されてきたスキルとこれからを創るアイデアを結び、作り手とお客様が共に愛することのできる時間を生み出していく。そんな想いを込めたいと願いました。

新しい時代のCUSTOM72に託された、
使命とメッセージ。

設計に向けたプロセスを踏みながら、このコンセプトを持つモデルにふさわしい名称が求められました。ネーミングは、託された様々な使命を表す旗印として、また、モデルの世界観を開く扉として、重要な意味を持ちます。悩んだ末に原点へ立ち返り、たどり着いたのが、「光輝」でした。CUSTOM72のシリーズ名であり、明治から昭和初期まで使用された、増永眼鏡を語る一つの歴史です。 当時使用されていたロゴデザインはすでに社内には残っておらず、新しく作成する運びとなりました。増永眼鏡の昨日と明日をつなぐ意志そのものである現会長の書いた文字を使用して、デザイン化を図っていったのです。

【伝】【洗】【喜】。その3つのコンセプトを反映するデザイン作成には、長い時間を要しました。大胆に、繊細に。そして感覚的に、戦略的に。数ミリのラインの違いにこだわり、肉眼では確認しづらい厚みを追求し、最適かつ絶対的に必要だと信じられる装飾を考え、掛けやすさの真髄を探しました。最終的な5型が決定するまでに、何百枚ものデザイン画が描き出されていきました。

職人の手と目が欠かせない、
緻密な多段階のプロセス。

そして、導きだされたデザイン画をもとに、製造プロセスへ移行します。膨大な工程の中から主な13工程を抜き出してご紹介しましょう。

●生地工程

[1] 生地の選定

光輝用の生地を選定します。材料は、主にカラーが美しいイタリアMazzucchelli製を多く採用しています。あまり知られていませんが、材料はもともと畳1帖ほどもある大きさがあります。材料の段階では見栄えしませんが、磨くことで鮮やかな光沢が生まれます。

[2] カッティング

プラスチックの材料は、レーザー機器を使ってカットされていきます。無駄なくスピーディーに、フロントやテンプルなど部位に合わせた生地を作りだしていきます。

●テンプル工程

[1] 芯貼り

レーザーでカットした生地をさらに二つに割り、金型へ。生地の間にメタル製の芯を挟み込み、特殊な溶剤を塗った上で、生地同士を熱と圧力で接着して冷却します。この貼り合わせる作業が、この工程が「芯貼り」と呼ばれる理由です。積み重ねられたノウハウと熟練した技術が必要となり、現在、「芯貼り」が行える工場は県内にもほとんどありません。

[2] 外形削り

芯貼り工程が終わると、テンプルの形状を削り出していく作業へと移行します。この際に、基準となるのがプラスチックの材料に挟まれたメタルの芯です。

[3] 裏削り

外形を削り出した後は、テンプルの厚みを削っていきます。これによって、経年変化で少しずつ縮んでいくプラスチックの特徴をコントロールし、メガネがズレ落ちにくくします。

[4] きさげがけ

機械削りでフラットになった面を、熟練した職人の手によって丸く仕上げていきます。この丸みが、かけ心地の向上へとつながるのです。この後、磨き・ガラ入れの工程(フロント工程で詳細説明)を経て、テンプルパーツが完成します。

●フロント工程

[1] 山曲げ

レーザー機器によってフロント用にカットした材料に対し、金型を用いて熱と圧力でカーブを加え、山(メタルではブリッジと呼ぶ)の形状を描き出します。

[2] 内径・外径・裏削り

山曲げ工程の後は、フロント削りへ。内径→外径→裏削りの順番で進行していきます。ここでポイントとなるのが、確かな固定です。材料を治具にしっかりと掴ませて位置決めを行わないと、中心のずれた形状が出来上がってしまいます。

[3] 蝶貼り

蝶(パッド)貼りを行います。溶剤を用いて蝶をフロントに貼っていきます。貼り付ける角度や高さなど左右のバランス調整が難しく、条件が悪いとパッドが外れる原因となります。熟練した職人の技術が反映される工程です。

[4] バレル研磨

バレル研磨とは、バレル(容器)の中に被研磨品、研磨材、研磨媒材を入れて、容器に振動や回転を与えること。被研磨材のバリや角を落としたり、表面を磨いたりする手法を指します。ここでは、粗ガラ→中粗→中仕上げ→仕上げのおよそ4段階の順に研磨しています。
最初に大きな傷を落として形状に丸みを出し、徐々に光沢を持たせていきます。研磨の途中では、職人の手による泥磨き工程が差し込まれ、バレル研磨のみでは落ちない傷や表面の荒れに対処します。これによって、仕上がった時、表面に一定した美しい光沢が生まれるのです。泥磨き後、バレル研磨を再開。光沢の出たフロント・テンプルパーツが完成。これらを組み合わせて枠を仕上げていく工程へと移行します。

●組立工程

[1] テンプル加工

フロントとテンプルをつなぐ丁番をテンプルに取り付けるために行うのが、座彫りです。座彫りを終えると、丁番をセットして穴をあけます。ピンが付いた銀飾りを、エキセンと呼ばれる道具で圧力をかけてテンプルにセットし、テンプルの裏からピンを潰して丁番をかしめます。フロントの接合部(合口)をカットしてテンプルの加工は完了です。合口カットの精度が低いと、フロントとの組み合わせ時に接合部に隙間が生まれ、フロントとテンプルが合っていない(合口ではない)フレームとなってしまう恐れがあります。

[2] フロント加工

フロントにテンプルをつなぐための丁番を熱と圧力により埋め込みます。その際、条件や冷却のタイミングが悪いと丁番がぐらついたり、泡が入ってしまったりすることがあります。この後、熱をかけてフロント飾りを埋め込みます。フロントやテンプルに施された銀飾りは、1970年代に使用していた飾りを再現しています。

[3] 枠組立